甘口ピーナッツ

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「星砕きの巨神」とは何か?~砂塵世界の下に埋まるモノ~

 砂漠の民に古くから伝わる伝承、ジャリルのキャラエピを始めとして複数のキャラの口に形を変えて登場する単語、ワーフリ謎ワード五本の指に入るであろうあのフレーズ。

「星砕きの巨神」

 これはいったい何なのか?砂塵世界においてどういう位置づけなのか?気になってしょうがないので、キャラエピを中心に一通り情報を羅列し、疑問点を書き出して、つなぎ合わせていった。またその過程で砂漠出身者のキャラエピをほぼ全て巡ったので、砂漠世界についての情報も併せてまとめていく。

 本論の概要を先に述べる。キャラエピごとに散らばった情報を整合的に並べていくと、なぜか不自然に語られていない“穴”が見つかった。全部並べることで浮き上がる隠された情報。それは恐らく、「核」だ。お付き合いいただきたい。


~今回のこの考察は「ワールドフリッパー総合Discord」考察チャンネルの方々の協力を得て書いています。本当にありがとうございました~

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ストーリー第2章「砂塵の王国」再考

 砂漠について考えるならまずはストーリーからである。本編第2章「砂塵の王国」を読み直した中でめぼしいと感じた情報を、いくつかのトピックに分けて書いていく。

砂漠世界自体について

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  • 高温で降雨量が低く、過酷な環境である
  • 中央=王家、支配階級と辺境=部族、ゲリラ的階級の二極化が進んでいる
  • “獣人”は見世物になる程度の知名度。この世界にはおらず、兵士長は「化け物」と呼称した
  • 少年兵の存在や王家の専制などからして、現在の文化水準は決して高くない

 砂漠世界自体についてである。気候はかなりオーソドックスな乾燥帯、無植物地帯だ。植生もサボテンが精々で、後は岩だらけの不毛な世界であり、そのせいか人々の性質もどこか殺伐としている。

 街並みからして、砂漠世界は高温乾燥気候に良くある石造りの建造物を主体とした街、俗に言う中東的な建築文化を有している。うーんイスラーム。「辺境」というワードも一瞬出てきたが、これは後述のキャラエピ付近で詳しく見ていく。

 文化レベルはお世辞にも高くない。山賊が跋扈し兵士が街を守る奪い奪われの世界観であるが、一方で王家は古くから存在し、何かを探している。後述のキャラエピからは奴隷商や人さらいの描写も出てくる。どうしてこうなってしまったのか。

王家について

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  • 王家の目的は「遺跡に眠る古代文明の発見」、ワールドフリッパーをそれと同一視
  • 先王(かわいい)は直上に神殿を建てることでそれを秘匿、理由を「深謀遠慮が故だ」と形容する
  • 専制的に兵力を恣意的に使用できる程度の権威を有している
  • 領主にはガーディアン(≒ゴーレム)の行使権がある

 王の間を眺めると、床にはアラベスクに似た幾何学模様。左右には黄金のライオン、象徴学的に力や権威を表す存在が、客人を威圧するように狛犬然として並んでいる。うーんイスラーム。宗教体系も違うのになぜアラベスクがあるのか?と一瞬思ったが、これは野暮だろう。

 作中から見て取れる王家、特に現領主の行動目的は大きく分けて二つだ。「外敵・異物の排除」と「古代文明遺構の発見」である。前者は体制維持のために必要な行為なので良いとして、後者は黒ステラと軌を一にしている素振りだったし、散り際に何を彼女から拝領しようとしていたのか。虚栄心や劣等感からの恐怖政治のようだったが、一方で王家の目的を「悲願」とまで形容していた。彼の目的は何だったのか。

 そもそも「ガーディアンの行使」は元から備わっている権能の様子である。民を支配するには十分な暴力を有しながら何を目的として「古代文明の遺構」を探し求めたのか。超級になってなおカカシ役として愛されるゴーレムでは心許ないにしても、より強い力を求めてのことなのか。それほどの力とは、いったい何なのか。

遺跡について

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  • 遺跡地上部には四角柱、頂上に上を向く目のようなアイコン
  • 遺跡地上部には白タイル、表面に上を向く目のようなアイコン
  • 遺跡内部には黒タイル、表面に正面を向く目のようなアイコン
  • ステラ「遺跡内部は高度な文明に拠るもの。遺跡地上部はこれの模倣」
  • ステラ「遺跡内部は1000年以上古いもの」と判断
  • 遺跡最奥部床に八角形の囲い、中央に正面を向く目のアイコン、そこに向けて回路と文字。魔法陣のようである
  • 遺跡最奥部に立方体の浮遊物。表面に回路。オレンジー黄色に発光している
  • 遺跡最奥部の壁向こうにワールドフリッパーが隠匿されていた

 「目」が終始気になった。キリスト教圏においては全能を意味する「プロビデンスの目」が、イスラム圏では回復・月と太陽を意味する「ホルスの目」が著名である。どちらの文脈からでも目が重要なシンボルだということが分かるが、ではワールドフリッパーでは、この世界では「目」は何を意味するのか。

 異常なほど古い遺跡と、蓋をするように建てられた遺跡。描き方も微妙に違うが、どういう関係性にあるのか。そもそも古代文明はなぜこれほどエネルギー体系から別格の文明を築きながら姿を消したのか。

キャラエピから考える

 ワーフリはキャラエピが非常に潤沢なので、情報が非常に多い。特に砂漠世界出身者は中々に多く、苦労した。得られた情報を羅列し、吟味し、各個にコメントしていく。

単純に砂漠出身

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シロさんがまだ格好良かった頃

 まずは砂漠出身の人々。過酷な環境である砂漠世界がどのように描かれているのか。描写を押さえながらディテールを詰めていく。何が分かるのか。

[辺境の狩人]ハーシュ

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  • 辺境には王家の手が届かない
  • 遺跡にはワールドフリッパーが埋まっているものがある
  • 遺跡には王家を転覆させられるような力が眠っている
  • 辺境の民は王家打倒のために遺跡を探っている
  • ハーシュが持つ電磁銛は遺物である

 貫通色の強いスキル構成、スキルブーストもあるから意外とやれるんじゃないか?アゼルと組んでいつか廃竜退治しような。

 正直一番ヤバいと思う情報「ワールドフリッパーが一つの世界に複数存在する」が出ている。他の世界では観測した範囲でそのようなことは見られなかったし、そもそも話の根幹に絡む時空間移動装置がそういくつもあってたまるかとも思う。そんなものが眠る「遺跡」とは何なのか?王家と辺境の民は何を捜しているのか?

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覚醒後の顔がめちゃ主人公然したイケメンフェイス。外伝コミカライズが出たら主役やってくれ


[砂漠の銃士]イリス

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  • イリスは、遺跡での突発性の地震後、星見の街に迷い込んだ
  • 「天使」というワードが存在している
  • 砂漠の世界では少女の身売りや人身売買が存在する

 本名「イリス・ラスター」。スキルに耐性ダウン持ち、スキルブースト有りのスキル寄り構成。出自がクッソ痛ましくて強くて一気に好きになったし、そのキャラと関係性深いのはヤバい死ぬってなった(語彙消失)

 「遺跡で逃げていて」「意識を失って」「気づいたら星見の街」という異色の経歴の持ち主。ハーシュエピにもあった野良フリッパーに偶然載せられたのか、それとも何か他の要因が重なったのか。

 砂漠の世界の文化構成に触れられたエピソードだった。現世でも人身売買は近代までおおっぴらに行われていたが、文化レベルはその辺りに相当するか。物騒な世の中で口減らしも兼ねて、というのは多くの作品で見られる類型だが、やはりいつ見ても胸糞ではあるなあ。

 所持している銃、普通の連装銃かと思いきや遺物とケーブルで接続している。結構カジュアルに運用されてるのね遺物って?

 本筋とずれるが、地味に「天使」というワードが気になった。魔族は当然のようにいるが、対立構造の反対側にいるであろう「天使」「天界」の情報はワーフリ世界の中で今のところ皆無だ。そんな中妙な所でポロリと漏れたが、気にし過ぎだろうか。8章で何かわかると良いなあ。

既視感の正体

[調和の癒し手]ハリシャ

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かわいい

  • おハーブ
  • 砂漠の国は女性が一人旅しても何とかなる

 火星3回復双璧の一角。弱体回復持ちは貴重。覚醒後が世界一可愛い一途ドジっ子お姉さん。最高の夢をお持ちなので皆さんも早くエピ見て。

 考察的な知見は少なかったが、流しで旅をしても大丈夫、らしい。街中なら安全ということだろうか。バックボーンがわからないのでこれ以上は言えない。

 帽子にブチ穴がある。あまり見ない特徴的な意匠、同じものを持ってる人はいただろうか。

 ここまで褐色白髪が三人並んだ。

[遠見の占い師]フォウラ

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でかい

  • 砂漠では雨は貴重、土地の将来を左右することもある。

 雷には貴重な低レア回復キャラ。HPも伸びるので安定感が増す。色々とデカい。

 砂漠、というからにはやはり水は貴重なようだ。ストーリー中で上位者の存在が明言されたが、この世界を誰かが構築したのなら、なぜここまで過酷な世界にしたのかと考えてしまう。

 いくつか五芒星の意匠。星をテーマにしているだけに、少し意識したい。

[残生の闘士]アディル

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  • 辺境では奪い奪われが日常となっている
  • 飢饉が存在する
  • 砂塵の世界で喋るケモノは馴染みがない

 闇貫通で時々お目にかかるイケメン。元勇者サマや白い聖獣が仲良くボロ雑巾になる世界で貴重な常識人枠。「平和を願う意思」で発現するスキルが「貫通」ってなんかエモいですね?(語彙再消失)

 自然の猛威と、そこに端を発する人と人の醜い争いが描かれるキャラエピ。義人であるアディルの性格が色濃く見える話だったが、砂塵の世界はかなり薄暗い世界観だ。なぜこのような舞台が有る必要があるのだろうか。服装は三角と四角の意匠。脚絆がセクシー!

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このセリフは中々言えない。本当に常識人だよアンタ

[砂塵の魔具使い]モルディアーガ

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  • 砂塵の世界は魔法、精霊に関して馴染みが深い。

 水パワフリとそれに連動したスキルブーストを持つ摩訶不思議なキャラ。ワーフリ総合Discordでは愛されてるんだかけなされてるんだか、色々な呼び名が付いている。

 砂塵世界の、という話だと語れる内容は皆無に近いが、「精霊とは?」辺りのトピックで色々と言えそうなので、そちらに言及することがあったら改めて取り上げたい。

[踊る水の華]ソーニャ

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かわいい!

  • 見世物の一座で、踊り子を務めていた。
  • 「月の踊り」が存在する。精霊と関係?
  • 意味深な歌を歌う(内容は後述)
  • 百合営業

 本名「ソニア・テレーズ」。みんな大好き水コンボのエース。黎明期から今まで変わらず愛され続ける良スキル良アビリティ。どこかのエロ龍様は見習って(飛び火) よく見ると下半身が大変なことになっている、林檎の審査をどうやってかいくぐったのやら

 踊りに対してライトが「煽情的」と表現していたが、出自を考えればそうもなろうか。身体が喜んでいるとも言っていたので踊ること自体は好きなようだが、「身体が疼いて踊りたがる、その声に従うだけ」という発言に一抹の不穏を感じる。

 過去に踊りを見たソーニャ、それに関して「あれは月の踊り」「それを踊るあの子は本物の精霊のよう」という発言があった。ステラはそれに対して「貴女は星と踊っていた」とコメント。ソーニャが見た少女は誰なのか、ステラの発言の真意は何なのか。「月」と「星」は同軸に置いて考えて良さそうだが、その軸線上にはまだ何かあるのか

 以下にエピ2に出た舞の韻文を記す。

> 「星と踊る勇者達の舞」

 星をこの手に、歌い踊れ  滴る願い、この身に這わせ・・・

 不穏 アンド 不穏。「勇者」ってほんとになんなんだ。それはそうとイリスエピを早く見てくれ。

[辺境の導き手]ラキーシャ

 持ってない(慟哭) スキルブーストで水パワフリの始動を担うエンジンキャラ。二つ名的に、辺境に関する色濃いネタがキャラエピにあったりするんだろうか?うーん苦しいなあ。水ピックが来たら色々検討だ。

「星砕きの巨神」に言及

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 本丸である。今回の考察の原動力がここである。私が把握している範囲で「星砕き」あるいは「砂塵世界の神」に直接言及しているキャラは、この3人だ。以下に示し、可能な範囲で分析していく。

[寡黙な巡業者]ジャリル

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  • 「砂月の民」出身だが、今は存在しない。本人は「奪われた」と称している。
  • 「砂月の民」は家族を裏切らない。
  • 「星砕きの巨神」の伝説が伝えられているが、空想交じりでもある。
  • 「星砕きの巨神」の下僕としてゴーレムが存在している。
  • 王家は自分達を「巨神の力を授かった神官の末裔」と称している。
  • 巨神の力を宿す聖遺物があれば王家の力を奪うことが可能だ。
  • ステラは何か知っているんじゃないかと考えている。

 声顔性能の三拍子揃った闇低レアの星。軽快なスキル回しと属性耐性ダウンで駆け抜ける。

 情報の密度が濃く、固有の情報が多い。特にエピ2一言一言が重要語録、今回のヴァーグナー

 「砂月(さげつ)の民」出身。口ぶりからして後述の「星砕きの巨神」に直接滅ぼされた様子。実体を以って権能を行使するほどには近い存在、ということなのだろうか。

 「月」というワードは先述の砂塵の国出身者のキャラエピにも若干出ているが、関連付けてどこまで考察が深められるだろうか。少なくとも月を冠するからには何かあるのだろう。

 「巨神」と「王家」とを直接結びつけて言及してくれた。助かる。情報を整合的に捉えると「過去に王家は巨神の力を持っていた」が「今は王家も巨神の力を失っていて」、「次に巨神に直接繋がる権能を獲得した組織が権力を得る」といったところか。辺境の民の目的や王家の乱心の理由もなんとなく察される。一方で「巨神」とは何かはついぞわからなかった。一体何者なんだ。

[迅雷の拳王]バラク

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  • 「星砕きの神」を信仰する、辺境の部族の一員だった。

 あまりにピーキーなスキル構成から当初は星5ハズレ枠だったのが一転、今やセラやバレッタと組んで超ヤドや水廃竜をボッコボコにし続けているコンボスキル軸のエース。バラクラリスが手放せない。

 情報は一筋だけ、「星砕きの巨神」が信仰の対象であるという内容だ。バラクが居た部族は神頼みよりも人の力による国家転覆を企んでいたが、結局それは抑圧からの解放が目的で良いのだろうか。

 王家王族からも辺境部族からも探し求められる古代文明の力、それは一体何なのか。

[目覚めた古代兵器]ネフティム

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  • 遺跡の中の遺跡に眠っていた。シロ曰く「とんでもねえ兵器が眠っている」「辺境の連中が打倒王家のために探し回っている」
  • 眠るネフティムをルインガードが守護していた
  • 命令の発生たる管理者を一人で待ち続けた。起動直後はステラを管理者と認識した
  • シロ曰く「ステラとネフティムは似たような顔をしている」
  • 戦闘を目撃した市民から「あの遺跡の?」「ただの伝説のはずじゃ」と囁かれ「こっちにあれば役に立つからよこせ」と懇願される

 ネフネフの片割れ、光フィーバーの担い手。ワーフリの看板を背負って立つサタデーナイトフィーバーガール。本論の重要参考人さては「星砕きの巨神」だなオメー?

 「ネフティムはそのために存在する。星を砕き、すべての夜に終わりを。」とかいうド級意味深発言と共に目覚めた少女。「星を砕く」「夜を終わらせる」という表現は興味深い。本論の趣旨である「星砕きの巨神」との関係性が強いことを伺わせる。先述のキャラエピで既に「星」「月」「夜」などのワードが散りばめられている。点と点とを一気に線にできる。

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 封じられていた透明黄色の結晶に見覚えはなく、唯一あるのはその構造。八角形の基礎部は、二章ストーリーで発見された王宮地下のワールドフリッパーのそれと一致する。ネフティムは「ワールドフリッパーに並ぶ遺物」と考えてよいだろう。

 それにしても市民の反応が気になる。ネフティムを「伝説の」と呼称し、必要とした。なぜネフティムを必要とするのか?手にすることで彼らは何をしようとしたのか?

結論と考察

 以上の情報群から、考察をしていく。「星砕きの巨神」とは結局何なのか、私なりの結論をお伝えしたい。

ネフティムこそが「星砕きの巨神」なのか

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 少なくとも、彼女が複製可能な何かしらの人造物、あるいは記憶を操作されて強化された人間であることは疑いようがない。個人的には前者を支持したい。根拠はシロの「二人が似ている」という発言だ。複製されうる存在であるステラとの関係性を明示したのであれば、そちらに寄せた解釈をするのが自然だというのが私の立場だ。そもそも「ステラとは何なのか?」が不確かな現状では、これ以上は言いようがない。

 では、彼女こそが「星砕きの巨神」なのか?根拠となるのは彼女自身の「ネフティムはそのために存在する。星を砕き、すべての夜に終わりを。」という発言、そしてアルクたちが苦戦した複数の機械を文字通り瞬殺した余りにも異常な力だろう。少なくとも彼女が古代の超文明を司る端末の一つであることは間違いない。彼女の権能を目撃した市民は、辺境や王家の人々と同じく「その力で外敵を排除しよう」と考えたのだろう。

 一方で反証としては二つ、一つはアルクが発見した時点で封印されていたこと、「巨」と冠するには余りにも体躯が小さすぎることが挙げられる。彼女が巨神だとしたら封印されて長い月日が経った様子からジャリルの故郷を滅ぼしたことと矛盾するし、何より巨大ではない。むしろ控えめなほうだ。

 私の結論を言うと、彼女は「星砕きの巨神」自体ではないかなり近しい存在ではあっても、ジャリルの村を滅ぼしたり、バラクの一族から信仰を集めたりするそれ自体ではない。彼女は余りにも無垢であり、それ故に手にした管理者によっては「星砕き」を成すだろうが、少なくとも「過去から存在して信仰を集め、力を行使する主体」と考える。

 では「星砕きの巨神」とは何なのか。この辺りで新たな疑問が生じ始めた。「巨神」というが、それは「人の形をした個人を指す」のか?

「月」の反対には何があるか

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 ここで考えたいのは「月」というワードだ。抑圧されたソーニャを感動させた「月の踊り」、ジャリルの部族の名前は「砂月」の民で、それを滅ぼした「星」砕きの巨神。これらに共通するのは何か。どれも「夜に存在するもの」という点だ。辺境の民を司る単語には、夜を思わせる言葉が散見される。

 だが、逆に不思議なことがある。それは、これだけ月や星のような自然物が出ていながら、その導線上にあるあの単語、砂漠の象徴と言ってよいあれについての言及がないのだ。

 すなわち、「太陽」である。

 だれのキャラエピにも、「太陽」を司る存在への言及がなされていない。砂漠世界においてこれは、不自然と言って良いのではないか。何かを見落としているのか、あるいは繋げていない何かがあるのか。

 ここでネフティムの象徴的セリフをもう一度確認したい。  

「ネフティムはそのために存在する。星を砕き、すべての夜に終わりを。」

 「夜」に「終わり」をもたらすために存在するのが「ネフティム」ということだ。これと先述の「ネフティムが巨神と近しい存在だ」という情報とを整合的に解釈すると、一つの結論が導き出される。

 「星砕きの巨神」は「太陽」を指している。そうとしか考えられない。

遺跡に彼らが見たもの

 バラクの一族は「星砕きの巨神」を信仰している。これはこちらの世界における太陽信仰と対応すると考えることが出来るだろう。巨神=太陽の導きを信じる一族が闇に紛れて行う暗殺に手を染めているのは余りにも皮肉だし、バラクがその有様を見て怒りを覚えたのも無理のないことだ。このような一応の根拠もある。

 しかし概念としての「太陽」で説明が付く部分がある一方、「王家が太陽を欲していた!」ではあまりにも曖昧すぎる王家も辺境の民も追い求めるような「太陽」とは一体何か、もう少し整理し、掘り下げていく。

 「星砕きの巨神」は王家は軍事力として古代文明を求めているからにはそれには大きな、星を砕くほどの破壊力が伴う。それはジャリルの一族が住まう村を消すほどの力、エネルギーを備えており、それを握れば暴力吹きすさぶ砂塵世界で覇権を得られると唱えられている。それほどのエネルギーと「太陽」というワードはどんな線で結び付くか?なぜ古代文明が滅びざるを得ず、その遺構は地下深くに長期間封印せざるを得なかったのか?先王がシロに語った「深謀遠慮」とは何だったのか?

 太陽から得られるものは何か?太陽光線?それなら常に彼らは享受しているし暴力性に乏しい。熱?それも彼らは持っている。火でも燃やせば熱は取り出せるし、そのために払う犠牲が大きすぎる。では彼らは何を「太陽」に見ているのか。より大きく、持つだけで敵がひれ伏すような、自分達では生み出しえない莫大なエネルギーだろうか。ならばそれと「太陽」とはどう結びつくのか?

強すぎた“力”

 太陽という存在と、強すぎるエネルギー。我々は現代の知識で、それを「核」という線で結び付けられる。「星砕きの巨神」とはすなわち「原子力エネルギー」、あるいはそれに準じる「手に負えないエネルギーの奔流」を指していると私は考えている。

 「巨神」とは具体的な立像ではない。余りにも巨大な権能を振るい、人々に文明の調和と甚大な破壊とを共にもたらしうるエネルギー概念自体を、ヒトが神と形容したのだ。ネフティムはステラの手で「生まれた」時、調和も破壊もどちらも為しうる状態だった。神とはヒトが考案した装置である。入力次第でどちらにでも転ぶ危うい存在、それは現代の「核融合発電」と「原子力爆弾」の対応とピタリと符合する。

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 そもそも遺構から掘り出された兵器が、そのまま機能しているのもおかしい。イリスの腰に提がっているあの箱には何が収まっているのか。そこにある「太陽」は、それ単体で無尽蔵にエネルギーを取り出せるのだろう。ルインゴーレムやルインガードが数千年単位で眠りながらもその動力を維持している点にも説明ができる。

 ここまで言うともはや魔法のようだし、「巨神」は「魔法」だとも一時は考えたが、それでは精霊が周囲にいる環境でわざわざ「遺構を掘り出して使う」意味が分からない。遺構に宿る精霊存在ではなく、遺構自体に意味がある。それは今の彼ら=精霊が側にいる状態では再現することができない機能であり、長い蓄積によってしか構築しえない「科学の結晶」を掘り出してそのまま行使しているのだと言える。  古代遺跡の上にはまるで蓋をするように遺跡が建てられていた。それはその絶大な力を悪用されまいとした古代人の叡智によるものか、それともエネルギーの暴走の果てに汚染が広がり、古代人がその場しのぎに覆いを設けたのか、これは分からない。何はともあれショタ先王の「深謀遠慮」とは「古代文明に触れてはいけない」という警句だと私は考えている。

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「月」と「夜明け」

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 では太陽の対極、「月」とは結局何なのか。「月」は自然それ自体、あるいは自然の中で生きるヒトを指すと考えてよいだろう。ソーニャは人攫いの元で踊りを覚える最中、自由に踊って見せる少女を見て「月の踊り」と形容した。ヒトはヒトらしく自由に在ることを「月」だと形容したのだ。機械文明に所属していない砂塵の世界の住人はある意味全員「月」側に属している。そしてその中で「月側でいることを許容するヒト」と「しないヒト」とに分かれている。

 対して「太陽」は紛れもない文明の象徴だ。それを独占しよう、自然側に留まってられないと争いが広がり、時として自然と調和するヒトに牙が向く。ジャリルの集落には「星砕きの巨神」=「太陽」の権能が降り注ぎ滅ぼされた。なぜ滅ばねばならなかったのかは未だ不明だが、その力は触れてはならないものであり、星見の街の本棚にすら情報は残っていない。ジャリルは「ステラなら何か知っている」と考えたようだが、ステラは何を知っているはずなのだろうか。それが判明するまで、彼の苦悩と巡礼の旅は終わらない。

 …そう考えると、太陽の化身と言えるネフティムが、ソーニャの様に踊りを覚え、ヒトの交わりの中にあることは、喜ばしいことなのだろう。「全ての夜に終わりを」という文句と共に生まれた少女。「夜=月」が出ている状態を全て終わらせ「朝=太陽」が状態にするという言葉は、今の私には「自然を終了させ機械文明を拓く」という宣言に聞こえる。そんな少女が今日ものんきにボール遊びに興じていられるのは、紛れもない奇跡だろう。

 その超越的な、神のごとき技術を誇った古代文明は滅び、ワールドフリッパーという次元移動システムと共に地下に眠った。フリッパーは複数あったが、あれは彼らが開発したのだろうか。では彼らは一体どこからきてどこに向かったのか。夜に包まれた地上に、また太陽が昇る日は来るのだろうか。

おわりに

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 いかがだっただろうか。「星砕きの巨神」の概念と、それにまつわる「太陽」と「月」の対比について語ったつもりだ。少し極論が飛び出したかと発想した瞬間は自分でも思ったが、繋ぎ合わせると今回も存外説得力のある考察になったのではないかと思う。

 一方で本論で無視したものとして、「星」の概念がある。「星砕き」という言葉を単純な破壊力の比喩だと現状は捉えざるを得ないが、一方でソーニャは星を「勇者」になぞらえているし、ステラの瞳にも「星」が印ぜられている。そもそも「ワールドフリッパー」が星を渡る話であるし、なにかの象徴であるのは明白だろう。ネフティムが隕石を行使する辺りと絡めて論じるのも面白そうだが、これは「勇者」について語る続稿に譲りたい。

 最後になるが、今回の考察は「ワールドフリッパー総合Discord」の皆さんと語った内容が主になっている。同じ方向を向いて話し合える環境があるのは本当に助かるし、新しい切り口を拝めるのは純粋に楽しい。

 次は「魔術体系」「機人と獣人の存在意義」「星見の街と植生学」の辺りを考えている。運営もどんどんキャラを追加していっているので、新しい供給が楽しみで仕方ない。それにしても本当に世界観構築の手つきが尋常じゃない、絵を描いているのは何者なんだろうか。

 終わり。ここまでご覧いただきありがとうございました。下記のコメント欄でもTwitterのリプライでも、ご意見ご感想頂けると大変助かります。

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