甘口ピーナッツ

多めの写真やTwitterに書ききれないことを書く

星喰いがもたらす深淵と終焉〜ワーフリ世界観考察〜

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 こんにちは。私は普段からゲームの考察をしては床を転げ回っている人類だ。特にワールドフリッパーというゲームが良いネタの宝庫であり、ここ数日で頭の中の色々が良い星辰を示したので、意味と魅力を伝えようとなんとか言語化を試みている。5分くらいで読めるので、お付き合い頂ければ幸いだ。

 さて、遡ること2月17日、運営から上記のような新キャラ追加が行われた。限定キャラが畳み掛けてくることがなくてホッと胸を撫でおろしたのも束の間、TLである事実が囁かれていた。

 大海の世界出身キャラが、多すぎる。

 ワーフリはご存知の通り(?)多種多様な世界観が売りであり、新キャラピックアップに出すキャラ選定をする側としては色んな出身のキャラが居ますよ〜という意味を込めて幅広い人選をするのが筋のはずだ。

 ではそうしないのは何故か。逆説的に考えると「大海の世界の情報濃度を濃くしたい」という意図があるのではないか。そうする理由は一つ、「大海世界を舞台にしたイベント」がくるのではないか。きっとそうに違いない、私の予言は当たるんだ。

(追記 執筆途中にまた深海関係者に違いないメイルビオラが実装、Discord考察チャネルが火に包まれるなどした)

 さて、最近のワーフリのイベントは、既存のキャラエピに登場していた伏線を回収するように展開している。画狂老人が登場した、フィリアの出自にスポットが当たった、といったところだ。では大海の世界で既に語られた伏線、解決されていない事象や存在は何だろうか?

 当然、みんな大好き「北の魔物」である。

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 シレーヌやディーネ、最近だとエドワルドのエピソードに登場した謎の存在。今回のブログはこの存在がいったい何なのか、語られている何人かのエピソードから情報をまとめ、今言えることを言うものである。

〜この記事はTwitterとワーフリ総合Discordの皆さんの協力でお送りしています〜

https://twitter.com/wf_totaldiscord/status/1271240173779484672#embed

史実における海洋生物の怪異

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 古来より、海洋は恐ろしい存在が棲む場所として恐れられていた。それは実際の生物の誇張であったり自然現象の仮託であったりと様々である。いくつかをウィキペディアのカテゴリー「海の怪物」などから紹介し、海洋の異形についての知見をまずは現代世界から求めたい。

https://ja.wikipedia.org/wiki/Category:海の怪物

クラーケン

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クラーケン(ノルウェー語等:Kraken)は北欧に伝わる「海の怪物」。タコやイカなど巨大な頭足類のような絵が多い。

 「クラーケン」とは「まがりくねったもの」という意味であり、現代の自動車教習で我々を襲う悪夢のグネグネS字「クランク(crank)」などと同根の言葉である。視覚的な形容がそのまま名前になったのだろう。

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 ギリシャ神話や中世大航海時代の手記、「海底二万マイル」などのフィクション作品など様々な媒体で見られるこの海洋生物に共通しているのは、その巨大さである。大きな腕で船を一巻き二巻き出来るというのだから驚きだ。

 近代においてはダイオウイカなどの頭足類と同一視され学名が与えられるなどしている。ワーフリ世界においても「タイダルクラーケン」として登場し、ストーリーで人々を襲おうと登場しては元気にワンパンされている。海洋怪異の中でもかなりポピュラーな存在だと言えるだろう。

シーサーペント

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シーサーペント(sea serpent)とは、海洋で目撃、あるいは体験される、細長く巨大な体を持つ未確認生物(UMA)の総称である。特定の生物を指すものではない。大海蛇(おおうみへび、だいかいじゃ)とも呼ばれる。

 クラーケンが大イカならシーサーペントは大蛇である。古い世界地図の余白的海洋部に挿絵として載っている勇姿を見たことがあるだろうか。なお上述の通り名前の区切りは「シー(海の)・サーペント(大型の蛇)」であり、沖縄の守護神とは何ら関係ない。

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 この存在で特徴的なのは、複数の“骨格”が漂着している点だ。この点からネッシーなどと並んでUMAに位置付けられ、たまにアングラニュースサイトを賑わせている。もっともそのほとんどがクジラの背骨だったりしているわけだが。海はロマンが尽きない。

レヴィアタン

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レヴィアタンヘブライ語: לִוְיָתָן Livyatan, 発音: リヴヤタン, ラテン語: Leviathan, 英語発音: [liˈvaiəθən] リヴァイアサン, 日本語慣用表記: レビヤタン)は、旧約聖書に登場する海中の怪物(怪獣)。悪魔と見られることもある。「ねじれた」「渦を巻いた」という意味のヘブライ語が語源。原義から転じて、単に大きな怪物や生き物を意味する言葉でもある。

 旧約聖書に名を連ねる大物であり、海洋怪異の本丸と言って良い存在だ。天地創造の5日目「神は魚と鳥をつくられた。」タイミングで生まれたとされ、陸を司るベヒーモスと対にして語られる海の化け物の総称である。上述の英語発音「リヴァイアサン」の方が馴染みのある人も多いのではないか。

 その姿は巨大な魚やクジラを模して描かれることが多い印象だが、ワニや竜などの爬虫類として描かれることもある。最後の審判の時に人に供される存在であるが、逆説的にその時までは絶対に死なない恐るべき存在という不死性が現代では着目されることが多い。

 後の中世キリスト教観では水から生じた悪魔とされた。不死性は「悪魔祓いが効かない」という性質に援用され、ベルゼブブやアスモデウスが名を連ねる第一階級に据えられている。また七つの大罪概念においては嫉妬の罪に当てられ、その際は蛇の姿を取っている。

クトゥルフ

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https://ja.m.wikipedia.org/wiki/クトゥルフ

クトゥルフ(Cthulhu)とは、クトゥルフ神話などに登場する架空の神性、あるいは宇宙生物である。海底に沈んだ都市ルルイエに封印されている、あるいは、眠っているとされ彼自身が物語上で活躍することはない。しかし夢のテレパシーや彼の信奉者が人間に危害を加える。 人間では太刀打ちできず、しかも好意的ではない太古の地球の支配者であり、人間の繁栄が宇宙からすれば短いものであるとしたラヴクラフトの「コズミックホラー」(宇宙的恐怖)を象徴するキャラクターとして、彼の作品世界観の代名詞として知られている。

 現代で海洋を題材にした作品を考える際にもう欠かせなくなった存在として、クトゥルフ神話が挙げられるだろう。敬愛すべきSF作家ラヴクラフトとその友人らが編纂した異次元神話は人口に膾炙し、今なお我々を惹きつけている。中でもクトゥルフは旧支配者の中でも「水」を象徴する主神である。

 神話によれば外宇宙から飛来した彼は南太平洋の海底に沈んだ石造都市ルルイエに棲み、星辰すなわち星の位置が正しい位置に収まった時に復活するとされる。テレパシー能力を有してはいるが、墓所を取り囲む膨大な海水によってその大部分は阻害され一部が漏れ出るに留まっている。

 見た目としてはタコのような頭部に触腕を顎髭の位置に据えた人型である。上記はあくまで仮の姿、という設定を採用している作品も存在しており、筆者によって微妙にブレがあるところだ。上記は比較的共通していそうな設定をまとめた。

「大海の世界」出身者キャラエピまとめ

 現実世界の話はここで終え、本題であるワーフリ世界の話に移る。例によって関係してそうな所、具体的には大海の世界出身とされるキャラクターに見当をつけて情報をまとめていく。協力してくださった方々、ありがとうございます。明日は良いことありますよ。

火星3 紅の呪剣士 トレーネ

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  • 陸政府は“海面上昇の謎を解いて大地を取り戻し”たい。
  • 海面上昇の原因解明のためには北の海域にいく必要がある。
  • 陸政府上層部は調査の打ち切りを決定した。
  • 海底の都市は“星の中枢を担っていた都市の一部”で「神託庁」と呼ばれる政府機関があった。
  • 大海の世界にある水は本来存在しないはずの量である。

 陸政府に所属していた白髪灼眼の女性。覚醒絵と相まってその出自の悲壮さと決意の固さが際立ついぶし銀なキャラ。パワーフリップ偏重なアビリティ構成はいっそほれ惚れする仕上がりだ。

 キャラクターエピソードとしてはジャリルに並ぶダークホースの1人だと感じる。ミスリル製の海底都市、そこはかつての星の中枢であり「神託庁」なる施設があったと、そう陸政府が把握しているとはっきり言及している。特に後者についてはマリーナが「こんな近代的なビルで前時代的なことを?」と一笑に付しているが、神なる存在については思うところがあるだろう。誰がなにを告げていたのか。オルヴェール辺りが知っていやしないだろうか。

 また「私の権限で閲覧できる資料では」という注釈があったところから察するに、陸政府はまだ何かを知っていると考えて良いだろう。トレーネは「異世界に続く扉があるとするなら存在しないはずの水、海面上昇の原因である海水がどこから来たか仮説が立てられる」と言っている。果たして陸政府はなにをどこまで知っているのか。そしてなぜ調査の打ち切りを決定したのか。トレーネ中尉は知らない。大佐なら何か知っているだろうか。

雷星3 フラーナ

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  • サルベージを生業にしている。
  • 自身の重量の操作がある程度可能で、それは触れたものにも及ぶ。
  • 曰く、体が軽いのは「よくわからない」「何かの呪いだとは思う」。
  • 何年か前に遺跡で「ピカピカ光ってた」遺物に触ってしまった。
  • 遺跡とは“海に沈んでも壊れなかったやたら頑丈な建物”のこと。
  • 地下まで続いている遺跡はお宝が多いが、大抵はシェルターである。
  • 伝説には「遺跡の向こうには海底都市がある」というものがある。
  • 海中に沈んだ遺物は、あり得ない重量を示していた。

 推し。頭ふわふわ元気っ娘。キャラエピを反映してか雷ながら浮遊軸のアビリティ構成をしている彼女、いつか輝く日は来るだろうか。それはミストルテインだけが知っている。

 得られる情報は単純に「遺物を触れたら身が軽くなった!」というもの。体重計が意味をなさないということは、恒常的に自身の重量がゼロになっているということだろう。彼女が触れた四角い遺物、その目的は何だろうか。よもや体重計が怖くなくなるタイプの美容グッズではあるまい、何か意図がある代物のはずだ。

 ちなみにスキル名「レリックス・フロート」、レリック(relic)とは英語で「歴史的な遺物、何かの面影」の意味である。彼女は何の力で空に浮くのか。ついでに言うと何の詠唱もなく魔術行使しているとも取れるのでもしそうなら気が狂ってしまう、助けてくれ。

闇星4 闇を暴くエージェント エドワルド

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  • 「深海の呪い」は魔法や錬金術では説明ができない。
  • エドワルドは「水底で見た輝き」=「何か」に力を授けられた。
  • エドワルド曰く、星見の街から見た星空のどこかに「何か」がいると感じている。
  • エドワルドは自分の力を「異世界から流れてきたもの」だと推測している。
  • 力を使うたび、頭の中に扉を模した印、幾何学模様が浮かび上がる。
  • その印は、砂漠古代文明の遺物のものと似ているが、違う。

 直撃だけでなく弱体付与に毒効果にと多芸多才なエージェント。身に纏う衣装の造形が実に示唆的な色男。キャラエピ3が何ともハードボイルドな台詞の応酬がとにかく圧巻だったので、必見。

 後述するディーネと同じく、北の魔物に呼ばれている存在の1人である。頭の中に浮かぶ扉の紋様、星空の中にいる「何か」。彼は何に誘われているのか、扉を開くとはどういうことを意味するのか。

 ちなみにビジュアル初公開にあたっての私の当時の反応がこちらになります。

水星5 鋼の狼 シレーヌ

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  • 陸政府は朱の刃を追っている。
  • 大海の世界は“滅びに瀕し“ている。
  • 海から“化け物ども(通常の魔物のこと)“が、今年に入って何十回と来襲している。
  • 化け物は北からやってくる。
  • その様子は何かに怯えているようだった。
  • 「星喰い」が目覚めた可能性がある。
  • 北の海域には政府も手出しが困難である。
  • 星喰いは、フロートに向かって進んできている。
  • 少なくとも星喰いの眷属は、一般的な艦砲射撃の集中砲火で撃滅が可能である。
  • 性豪

 攻撃アップとコンディション効果引き伸ばしに長けたつよつよ女将校。キャラエピではアルクくんの聖剣を弄りプレイヤーの度肝を抜いた。いつかシウエ辺りとエンカウントしたら頂上決戦おっぱじめそう。

 「星喰い」という概念を我々に初めて提示したキャラクター(たぶん)。当初は何かわからないものの総称だろうかと思っていたが、後述するディーネの登場と一部完結による深淵自体の解像度の向上により、意味が生まれてしまった。情報は点では意味をなさず、繋いで初めて絵が見えてくる。星喰いとは何なのだろうか。

雷星5 怪奇と少女 ロデ

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  • ヴリキは冒頭、複数の一人称を繰り返していた。
  • ロデの父親は一年前に海底で消えた。
  • ヴリキ(仮称)はロデを庇護する立場に立っており、ロデに危害が及ぶと現れる。
  • ヴリキのメットの下はアルク曰く「見たはずなのに分からない」。
  • メットを外すと赤い触腕を伴って暴走するが、ロデの呼びかけで正気を保っている。
  • メガネの男(星詠みの一員)曰く「星喰いの眷属」「上位に至る鍵」。
  • メガネ曰く、ヴリキが人語を解するのは吸収した意識の影響だが「あり得ない」はずである。

 貴重なかばう持ちとして登場し、雷背水パに幅を持たせた立役者。ユニークアビリティ「帯電」を持っており、今後が期待される。怪物と少女の類型からバイ○ショックだのジャイア○トロボだのと言われてるけどストーリーが何ともほっこりする仕上がりでとても良かった。

 考察としては戦犯一直線、あまりの情報量にDiscord考察班が幾人も脳を沸騰させていた。特に上記最下部の二つ、星詠みと星喰いとを絡めた功罪が大きすぎる。「星喰いの眷属」が「上位に至る鍵」とはどういうことなのか。

闇星5 †暗黒少女† ディーネ

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  • 本名「ディーネ・セレフィス」
  • アルク達を「ヴァーミリオン・ナイツ」「アビスの盟友」と呼称する。
  • 自称「虚無よりいづる暗黒の王ーーダークネス・ヴォイド・キングの巫女」
  • 上記の王はアルクたちに協力を求めている。
  • 詠唱「アビスの深淵、見るがいい!」「さあ、恐れよ怖じよ跪け!虚黒術・666式!」「世界を飲み込むアビスの底を見せてやる!」
  • ライト曰く「この怖気は魔族とは違う。」
  • ナイフ、虚空の刃を手にした時から、何者かの声を聞くようになった。 -王様(仮称)の「東に行け」という神託に従うと、水中呼吸の指輪を手に入れた。
  • ディーネ曰く、元は「ただの平凡なチュウニ病の少女」だった。
  • 王様はそんな彼女を「本物」にした。
  • ディーネ曰く「世界は、観測してこそ真となる」「即ち、観測するまでは全てがカオスだということ」「世界を敵に回してでも会ってみたい」
  • ナイフは普通の人が触ると「触った瞬間に倒れ」「目を覚まさなくなる」
  • ディーネ曰く「我が王のアビス・アイはあらゆる時空を超越する」
  • 謎の男(たぶん星詠み)曰く、ディーネはその価値も真の危険性も理解していない。
  • 詠唱?「弱き、脆弱なる、モノよ。囲いの中の、ヒトよ。幼年期を、終わらせーーー」

 cv田村ゆかり厨二病患者系少女、誰が呼んだか80年代の化身、属性過多女、スレイヤーズ。倒せば倒すほど全体バフを撒くスロースターター、そのうち輝けるクエストが来るに違いない。

 考察としてはもうお腹いっぱい。本人が混沌・善のアホキャラじゃなかったらこれだけで世界が終わりかねない危うさを秘めている。核心を考えるなら一つ、彼女は“何”の巫女なのか、その存在の目的は何なのか。

闇星5 深海の淑女 メイルビオラ

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 3/21現在、引けていません…(慚愧)。そのうち引けると信じてるので、いっそ後で答え合わせしてやろうという気持ちでいます。気楽なの大事…もし持っている方は読んだ上で、以下の考察をご笑覧いただきたい。え?持ってるけど読んでない?私の分まで読んでください今すぐに私が知らないことをあなたは知っています(血涙)

「星喰い」とは何か

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 さて、本考察の本丸である「星喰い」について考えていく。これは一体何なのか?

情報整理

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  • 世界が沈んだ際に現れたと言われている。
  • 聖域よりもさらに北、人魚すら立ち入れない深海の底に眠っている。
  • 闇のような汚水を吐き散らしている。
  • 別名レヴィアタン、北の魔物、怪物。
  • エドワルドに力を与え、扉のビジョンを見せている。
  • ディーネに力を与え、巫女とし、水中呼吸の指輪を手に入れさせた。
  • ヴリキオンは星喰いの眷属であり、上位者に至る鍵である。
  • 星見の街から見た星空のどこかにいる。
  • 北の海域の奥に海面上昇の原因がある。
  • 海底都市には神託庁が存在していた。

 ビジュアルからは、「黒い靄の中に複数の赤い双眸がこちらを覗く」という様子が見て取れる。ディーネやエドワルドのエピソードでも同一だったことから、固有のビジュアルが用意されている。シレーヌやロデのエピソードで一部分が行動している描写があるので、自切が可能な器官を有しているのだろうか。

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 人魚の古老はその存在を旧約聖書に記された怪物「レヴィアタン」と同じ名前で呼んでいた。作品として現実のモノの名前を代用する場合は往々にしてあるので完全に同一の存在ではなく、イメージとして共通している、というくらいだろう。もし全ての物事を固有名詞で説明しようとするとファルシのルシがコクーンでパージしてしまう。単に「水に関係する巨大な怪物」ということで良いだろう。

 ディーネとエドワルドに超常の力を与えているところから、何かの目的を達成しようとしていて、かつ自分では行動できないことがわかる。一方的に何かを与える場合はその対価を支払うことを前提としている、要はギブアンドテイクの法則である。加えて2人とも星喰いに助けられているという共通点もある。命、或いは居場所という致命的な負債を背負った2人は、そのために何かの形で返済しなくてはならない。

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 星喰いが眠る北の海域には海面上昇の原因が存在し、その麓には神託庁を擁した過去文明の都市が眠っている。フラーナが触れたような超文明を扱えていた都市はしかし、海の底に沈み過去の栄光を隠している。神託という概念を海賊の女は笑ったが、文明の根幹に神がいたことは事実らしい。海面が上昇する原因ともなっている北の海域には、古来から神が棲んでいた。

神託庁

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 ここでこの神託庁自体について、私自身の考察の変遷を交えて考えていきたい。

神託庁とワールドフリッパー

 トレーネのエピソードから、外の世界が関係しているのは明らかだ。陸政府はその存在を知ってかしらずか、北の海域を調査していた。この向こうにあるものはただ一つ、ワールドフリッパーの端末に違いない。端末自体がそこにあり、人魚の聖域のように守られていたのだろう。

 そうすると神託を授けていたのは星喰いそれ自体か、少なくとも上位者に近しい存在だ。何らかの目的で人々に声をかけ続けて文明を操作し、フラスコの中を調整していたのだろう、しかし何らかの理由があって頓挫、ワールドフリッパーからは別世界、多分砂塵の世界の水がこんこんと吹きだし続けて陸政府の悩みの種となった。星喰いは再起を図るために扉たるワールドフリッパーの元に人々を呼び集めている。

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 …というのが想定していた筋書きだ。大筋で齟齬なく整っており、私もこれで納得していた。しかしここまで考えたところで、あるキャラクターのエピソードを読むうちに違和感が生じてきたのだ。それは最近実装されたキャラクター、エドワルドのエピソードだ。

エドワルドが提示した矛盾

 最前から言う通り、エドワルドは「扉」の紋様を星喰いに見せられ、それを延々と探しながら話が終わっている。逆に言うと、エドワルドは「エピソード中で扉を見ていない」ということになる。

 しかしそう考えると妙だ。エドワルドは既にワールドフリッパー自体を使用=見ている描写があるし、ついでに言うならワールドフリッパーの紋様は作中を通して何度も登場している。彼の頭の中ではワールドフリッパーと星喰いが見せる紋様とが符号していない。つまりこの二つに関連性が見出されていないのだ。

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水は砂塵の世界から来たのか

 ついでにもう一つ。先ほど私は「水は砂塵世界から来た」と言う表現をし皆さんと共有したが、これは真実だろうか。地下のフリッパーあたりから水が流出したと言うような想像を巡らせていたが、この想像に根拠はあるだろうか。

 私が調査した限りでは「水が失われていっている!」という描写はひとつもない。「昔砂塵世界には海があってな」という話は今のところ存在していないし、水の奪い合いという描写も不思議なほど少ない。バラクなどは砂塵世界と大海世界とを行き来した貴重な人物だが、水がどうのという発言はついぞしなかった。

 もちろん「きっとそうに違いない」と想定することは十分に可能だし、何なら私もそれを支持してしまいたいくらいだが、そこには説得力が、根拠がないのだ。あくまで推測に過ぎず、真実にはなり得ない。あくまでテキストベースの解釈をして初めて、考察は考察になる。

結論と再定義

 明言するが北の海の最奥にワールドフリッパーは、無い。少なくともそこに扉は存在せず、星喰いはだからこそ別の扉らしき何かを求め、そこに到達できるヒトを求めている。水は他の世界からの流入などではなく、何か別の要因に因って発生している。

 ここで疑問点を再定義する。エドワルドに“扉”を見せる星喰いとは何か。水はどこから来たのか。この二つを根拠を持って言えれば、きっともっとこのゲームが楽しく遊べるに違いない。そう信じていた。

「北の魔物」の正体

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 先に私が達した結論を言うと、「星喰い」とはすなわち旧支配者の一柱クトゥルフその人、あるいはそれをモデルとした「外宇宙からの使者」である。詳細な目的は不明だが、目下の目標は大海世界ひいてはワーフリ時空への介入であり、そのために部分的に干渉を行なっている。以下にここに至った根拠を示す。

共通しすぎる描写

 キャラ造形や描写が、クトゥルフ神話で語られる主神クトゥルフのそれとあまりにも似ている。いくつか例をあげる。

・水に関係する神格である

ダーレスの体型づけたクトゥルフ神話、その中でも特に「四大元素」論派においては、旧支配者の一柱で「水」を象徴し…

・水没した遺跡に棲む

クトゥルフ海底に沈んだ都市ルルイエに封印されている、或いは、眠っている。

 主神たるクトゥルフは太古の昔に地球外から飛来し、ルルイエ(ル・リエー、ラ・イラーとも)に眠っている。星喰いも海中都市がある北の海中深くに眠っていると描写されている。

・「幼年期の終わり

 ディーネが星喰いに憑依された際の詠唱「弱き、脆弱なる、モノよ。囲いの中の、ヒトよ。幼年期を、終わらせーーー」にある「幼年期を終わらせる」と言うフレーズ、これはイギリスのSF作家アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」から取ったものだろう。これは上位存在が地球を友好的に支配するというものだが、最終的には上位者に感応した知性種の誕生により地球人類が自滅の道を歩む、というものである。クトゥルフとは関係しないが、この辺りからも星喰いは「惑星の外側からやってきて我々を観測する存在」として想定されていることがわかる。

 これらの描写から、「星喰い」のモチーフの一つに「クトゥルフ」が採用され、その要素として「外宇宙の存在である」という部分が強調されていることがわかる。現代サブカルの一角を占めるクトゥルフ神話体系、その要素がワーフリ作中世界を揺るがす存在として大胆に取り入れられているのだ。

宇宙の外側

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 エドワルドが持つ「呪い」は魔法でも錬金術でもないと明言されている。それもそのはず、星喰いとは元来ワールドフリッパーの範疇に無い存在、世界の外側概念から端を発した技能である。おそらくディーネやメイルビオラもそのような慮外の力を保持しているし、詠唱なしで浮遊を可能にするフラーナも、上位者=星喰いがもたらした超技術、或いはその面影に縋った先史人類の恩恵に預かっているのかもしれない。

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 とすると上位者という存在の位置付けも自然明らかになってくる。すなわち外宇宙からの来訪者、少なくともフラスコの外側の存在だ。上位者とは単純な知恵者などではなく概念自体が上の存在、地上から見た空、三次元の上の四次元、慮外の存在だ。一方でそれらは単一の存在では無いようにも思える。8章末尾のようにフラスコ内の秩序を保とうとする思想と大海世界を底から食い潰す行動とがどうも符合しないのだ。おそらく彼らは外宇宙の中で対立しつつ、我々の処遇を争って決めようとしている。

 余談だが星詠みたちは彼らのいずれかに到達するために、様々なアプローチで解析や接触を試みているのだろう。不老不死を求めたり、眷属に接触したり、揺らぎの最奥に至ったりと様々だ。詳しくはいつかまとめて考察するが、その前に二部が来るだろう。早晩にも墓石を買わなければならない。

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水は誰が用意したのか

 ここでやっと二つ目の疑問、水の出所に触れる準備が整った。水とは何か。このフラスコ状の世界において全てのものはエレメントで構成されていると考察している、よってこの水もエレメントの集合体である。一方でおいそれと他の世界からモノを持ってくると世界間のバランスが崩れるが、直接水が他の世界から流入しているという描写もない。ここで逆転の発想を行うと、別の出どころが浮かび上がる。

 星喰いが世界の外から侵入を試みているのであれば、水は必然、世界の外から発生しているのではないか?水をどこかから持ってきているのではなく、そこで水が新規に発生しているのではないか?

 これを想定するためには根拠が必要である。世界の外から流入してきたものが別の構造物に変換される事例はあったか?

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 あるのである。揺らぎ=世界の外がつながった時、それは例えば雫を象った結晶として物質化することがこのように明言されている。これは例えば揺らぎの迷宮を管理するのが迷宮の魔術師なら、そうなるように設定したと考えられる。プロキオ坊やが世界を書き換えると宣った以上、その基底には誰かが書いた論理が設定されているはずだ。では外世界の何かが流入したら水の形に変化するように設定したのは誰か?

 先に挙げた、このフラスコの世界の秩序を保とうとする上位者である。彼(あるいは彼ら)は自分が構築した世界が外から弄られようとした場合に、その複産物である外部宇宙のエネルギーを変換してブロックするファイアウォールを用意していたと考える。つまり外部からの侵略に対してフラスコ内の構造物を膨大に生成することで応急処置的に行動を抑制する、ある種の免疫作用の結果として大量の水が生み出されているのではないか。

 暴論だろうか、しかしそれ以外に水がどこからきたか想定できない。他の世界からきた訳ではなく、外宇宙は水に満たされていない、と詰めていくと自然、上のような考察になってしまった。腑に落ちただろうか。

これからの展開は

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 最後に触れておきたいのは、今後の星喰いがどのように振る舞うのかだ。上記の通り彼は今こんこんと眠っている。眠っている存在が行う行動は二つ、「眠り続ける」か「目覚める」かの二択だ。それぞれ考察していく。

昏睡のままに

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 目覚めない。作品としてはベターというか、話を延々と膨らませられるのでお眠りいただいた方が都合が良いだろう。クトゥルフ作品でも大半が「目覚めるかも知れない存在」としてのみ扱っており、主神は往々にして目覚めないのが正規エンドに設定されている。星喰いは目覚めず、旅は続く。それが安全で良い選択肢だ。

 この場合の問題としては、星喰いがマジで何なのか訳がわからないままという点だ。上の考察も結局は点と点を繋いだ綱渡りの末の結論に過ぎず、彼が起きなければ明確な答えが設定されないままである。それもまあ悪くはないが、いつか執筆者の答え合わせをさせてほしいものだ。

幼年期の終焉

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 目覚める。我々の幼年期を終わらせ、外宇宙との接続を果たしてしまうパターン。ディーネ辺りが歓喜しルナール辺りが失神する、かなり佳境なストイベ実装となるだろう。そもそもの世界自体の崩壊危機となるので、2部に食い込んでくるのかもしれない。クトゥルフが眠る都市ルルイエは星辰が正しい位置に収まった時再浮上し同時にクトゥルフも目覚めるとされている。作中でも人魚の長老は「星喰いが目覚めたのかもしれん」と警戒を露わにしているので、実はこっちに転ぶ方向で進行しているのかもしれない。

 問題なのは、その場合の変化が不可逆である点だ。キャラストはほとんどが時系列を意識せずに読めるような構成になっているのだが、星喰いが動いたり調伏されたりすると、先に書いたキャラの話が意味をなさなくなってしまう。前日譚的に読めるのかも知れないが、それにしても既に解決された問題を真剣に思案する構図になってしまい、面白みは半減するような気がする。

終わりに

 どうだっただろうか。フラスコのゆりかごの中で揺籃されていたアルクたち。そこからの脱却を半ば強制的に志望した彼らは、その安寧を破壊しようとしてくる使者とどう対話し、あるいは決裂するのか。何にせよもう少し情報が開示されるに違いないから、楽しみにしている。

 それにしてもキャラエピを読むのは楽しい営みだ。最近はTwitterでキャラエピの感想を貼ったり考察したりする方が多くいらっしゃって、眺めていてとても楽しい思いをしている。これからもよろしくお願いします。

 最後になるが、上の考察は私の中ではかなり整ってると感じているが、視点が違えば大きな陥穽が見つかるかもしれない。もしそうなら反論をしたり、あるいは自分なりの論理を構築してほしい。一緒にこのゲームを楽しみましょう。

 終わり。ワーフリに関する過去記事が少し下の方にあるので、もし良かったらそっちも読んでください。次書くとしたら魔法学かな…民俗学も楽しそうだな……まだまだわからないことがいっぱいだなあ!