甘口ピーナッツ

多めの写真やTwitterに書ききれないことを書く

題名と台詞に見る異常 ~ワーフリ10章実装直前考察〜

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 時は8月12日の正午、お盆もさしかかる頃に大型のアップデートがあった。新ボスの実装に廃竜の常設化、サイドストーリーの新設と一気にコンテンツが広がりを見せ、バトルに燃える人もストーリーを読む人も大いに盛りあがったのを覚えている。事件はその日の夜、21時に起きた。

ワールドフリッパー公式 on Twitter: "【今後のアップデートについて】 いつもプレイしていただき誠にありがとうございます。 今後予定しているゲームのアップデートについて、お知らせにてご案内しております。詳細はお知らせ「今後のアップデート予定について」をご確認ください。 https://t.co/fMEBB3PtEa #ワーフリ… https://t.co/C38SVJ99vQ"

 唐突に公式アカウントから、二つのツイートがなされたのだ。一つは今後のロードマップを示したものだ。運営も軌道に乗ったのだろうか、一周年頃から出るようになった修正や休止情報、向こう数ヶ月の割り当て表は大いに安心感のあるものだった。問題はもう一つの方である。ロードマップにも記載されていた「10章の公開」、そのPVが突然公開されたのだ。

ワールドフリッパー公式 on Twitter: "【メインクエスト10章予告動画公開!】 8月26日 12:00に、メインクエスト10章「終局の始原」を公開いたします! 世界を渡る旅路で、アルク達が次に出会う人々とは―― 予告動画を公開中!ぜひ #ワーフリ で皆様の考察を膨らませてみてください。https://t.co/k1yPLtEr1F #ワーフリ… https://t.co/3L9KqYtXQZ"

 内容もさることながら、目を引くのは同時に記載された「ぜひ #ワーフリ で皆様の考察を膨らませてみてください。」という文言である。これにTwitterのワーフリ考察班は大いに沸き上がった。なにしろこの言葉は「PVには考察の余地がある」という意味に他ならないからだ。ツイートがあった21時から狂ったように様々な角度から考察が行われ、一時はTwitterのトレンドに入るようにもなった。

ジミー@年末進行 on Twitter: "運営ーーッ!!!見てるかーーーッッ!!!!!お前たちのおかげでおれたちの情緒はもうめちゃくちゃだーーッッッ!!!!!!! #ワーフリ"

 当時の私もこのザマである。まあ楽しい熱狂であった。いまもその只中にいる。

 それから約2週間、ハルヒコラボもぼちぼち走りきり、次のクエストへの準備期間に入っている。なお、PVが発表された際に既に幾つかの興味深い考察が見られ、膝を打つものも非常に多くあった。しかしそれをそのまま下に書き立てるとどうにも借り物の論理になってしまうので、よろしくない。従ってそれらは何か別の場所にまとめるなどして、今回は出来る限り誰も触れていない部分の考察を行っていきたい。そして考察するのであれば足場をきっちりと丁寧に、最初から考えていかなければならない。

 そう、最初から。

9章「揺らぎの都市」分析

 10章を考えるに当たって、その接続である8章「廃の帝国」と9章「揺らぎの都市」で把握された情報を可能な限り拾い、コメントを残しておく。なお、非常に長くなってしまったため、もう知ってるよという方は上の目次欄から次の項に飛んで下さって構わない。一緒に10章に向けた前提知識の確認を出来れば幸いである。まずは8章の末尾、魔王を斃したあとのシーンから見ていこう。

14-3 勇者の旅路

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  • アルクは自分探しを行う。
  • アルクは最初から破星剣と扱う方法を持っていた。
  • アルクの故郷は既知の座標には無い。

 冒頭の人間ーエルフー魔族の講和、リアリティがすごいなあといつ見ても思う。簡単に三族手を取り合って一緒にと言ってしまいたいところを、ここで結んだのは不可侵条約だ。殺し合いを演じた種族同士の感情が生きている。こういう所が好きでワーフリを遊んでいるんだ。

15-1 揺れる世界

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  • レーヴェ曰く「アルクの世界はどこにもない。」「特異点は完成した、誰にも止められない。」「領域を繋ぐ行為は世界を壊す結果に繋がった。」「自分は魔王の意志を継ぐ。」
  • レーヴェは返すと称して、ステラに7つの光体を与えた。
  • 世界全体が揺らぐ=時空震が起きることで世界が融合し、ワールドフリッパーは機能不全に陥る。

 幼年期の終わり、天蓋を突き破った破槍根は、世界の本当の姿を白日に晒す。第2部はレーヴェとステラ、そしてアルクは何者なのかに焦点が当たることが暗示されているように思える。

15−2 粛清

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  • エステルリエルは上空に浮かぶ星々を「上古にして真の星、エル・ザント」と呼んだ。
  • 上位者の兵は魔族を「追放者」と呼んだ。
  • エステルリエル曰く「上位者の兵は勇者の眷属であり、ステラならば止められる。」
  • ノヴァは上位者に反旗を翻した壊れたステラである。
  • ノヴァ曰く「深淵を閉じることはできるが一時凌ぎ」であり「存在質量が臨界点を越えた以上世界は混じり続け深淵は再び開く。」「本当に世界を救うならば上位者と戦わねばならない。」
  • ステラが「永遠の監獄」=星見の街に独りでいれば深淵は開かない。
  • 勇者ルミエはエルフを造った時、歌を歌っていた。
  • 勇者ルフレは退屈をかき消すために冒険記を書いていた。
  • ステラは監視者にして裁定者、女神、粛清者である。
  • ステラが記憶を捨てるために天の逆槍で自身を洗浄し、そこから溢れた記憶や感情の集合体がレーヴェである。

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 ちょっと未だに脳が追いついていない。わかったような気もするが、どうしてそうなのか?という問いには答えられなさそうな、微妙な理解にとどまっている。後から戻ってくる所なのかなあ。粛清者くんは本当に中身は何なんだ。開けたら勇者に良く似た人がズルリと出てきやしないだろうな。

15−3 星の罪

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  • 深淵が閉じると上位者の兵も動きを止めた。
  • ステラ曰く「自分は星を視る者。」「世界を監視し粛清するための道具であった。」「上位者は星々が交流することを禁じており、破った者を粛清するのが勇者の役割。」
  • 魔界には世界の裂孔である「深淵」がある。
  • 深淵が世界を飲み込むか、その前に世界全体が上位者によって粛清されるかの2択である。
  • レーヴェはオーグが残した呪いの塊を手に消えた。

 なぜ深淵が存在するのか。そもそも深淵とは何なのか。ともあれゲームオーバーの条件が明確に示されたのは大きい。深淵を押しとどめつつ、上位者とナシをつける。第2部の根幹はここになるだろう。炎を胸に前に進んでいく。

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やさしいせかい

1-1 知るために

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  • 星見の街は世界の交わりを禁じるための装置である。
  • 融合を重ねた世界は自らの重さにより、他の世界を引きつける。
  • 深淵は遠い世界に繋がる特異点である。

 深淵についての情報が出た。世界を繋ぎ合わせた結果生まれるのは、未知の世界に繋がる扉、特異点だと言う。これを前提とするなら、上位者はこれを阻止しようとしているという構図になる。

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 余談だが既に随所で語られている通り、ここでステラの後ろに浮かぶ球と平面の構造物は、天体であるブラックホールの予想図式と一致している。以下の画像は2019年9月26日にNASAが発表したシミュレーションであり、現時点で最新のものである。考証が新しいゲームは良いゲームである。

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参考文献

NASAがブラックホールの動画を作成…近くまで行ったらこう見える | Business Insider Japan

1−4 シープシッパー

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  • シープシッパーは遊牧民であり、揺らぎの迷宮が形成される以前からパルぺブラに定住していた。
  • 以下、マ・ルルシャの詠吟写し

かつて人々(=ランドウォーカー)は嘆きの地に囚われていた。しかし『導き手(=シープシッパー)』は星の光を指し示す。あの向こう(=西の果て)に、安息の地はあると。

遠く遠く、地の果てを目指すように人々は導き手と共に旅を続けた。そして遂に、彼らは黄金の野(=ファーランド)に辿り着く。

歓喜が渦巻き、多くの者が、導き手の前に跪いた。我が王よ、永遠なれーーー

  • シープシッパーは、人々が発生した嘆きの地を聖地とし『始まりの地』と呼んでいる。
  • マ・ルルシャ曰く「導き手=初期のシープシッパーは、星の光に導かれて世界の外から人々を連れてきた。」
  • ステラは自分を知る必要がある。

 マ・ルルシャの説明回。最初期のシープジッパーと呼ばれる種族は、光によって人々をパルペブラに呼び寄せ導いたという。ファーランド王家とファトマ教の言い伝えや教典と付き合わせて考えたいところだ。そもそも光はなぜ人々を連れてきたのか、シープシッパーこそが王なのか。

2−3 ギルドの女

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ギルドの…女ッ!!!

  • 揺らぎの迷宮には「迷宮の枝」と呼ばれる小さな出口がいくつもあり、ギルドは秘密裏にそれを管理している。

 迷宮の枝という概念はここが初出な気がする。他ではまだ見たことがないように思うけど、クアレあたりでも言及されたりしてるのかしら。

3−3 悪党計画

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ギルドの……男ッッ!!!!!

  • 勇者は囮になった。
  • メムラムの種族(ベスタ族)はライトの世界から漂流してきた。

 世界と一言で言っても、様々な種族が共存してることがわかる。個人的にそれぞれの世界は上位者がフラスコの中身のごとくチューンされたものだと思ってるんだけども、この無作為な少数民族の存在も彼らの掌の上なのだろうか。

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 綺麗な青空、パルペブラの空である。この向こうには全く別の空が広がっているのを人々は知らない。

4−1 隠蔽

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  • メムラムは人が持つ『オド』から真偽を見分ける術を持つ。
  • ステラは揺らぎを感じ取れる。

 ギルドとベスタ、そのファーストコンタクトである。表面での圧力とオドを感じる能力とでもってイニシアチブを握るメムラムと、飄々としながら冷静に分析しているゼッヘル、対照的な様子が見て取れる一幕。

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 ここで言うオドとは、19世紀の科学者カール・フォン・ライヘンバッハが唱えた「オドの力(Odic force)」に源流があると思って良いだろう。北欧神話の主神たるオーディンに名前を借りたこの力は、万物が常に発している互いに引き合う未知の力を指している。現代では疑似科学の領域で扱われる概念である一方、オーラや引き寄せの力などのスピリチュアルな分野で現代でも生き残っている。メムラムの描写を見るにこのオーラ=人の心の鏡な側面を取って「オド」と呼んでいるようだ。

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5−1 開かれた扉

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  • アルク曰く「ゼッヘルに悪意は無いが、信頼しきれない節がある。」
  • 以下、メムラムの詠唱

我は心角の王。心角の統治者!

星の名代となりて、ここに命ずる! 剣よ、切り拓け!

 心角とは、メムラムが属するベスタの正式な名称なのだろうか。心を伝える角を持つもの、くらいか。

ISAS | 第12回:宇宙の麗人 惑星になれなかった惑星 ― 小惑星ベスタ / 宇宙の○人    ベスタとは、ローマ神話における竈門と家族の神ウェスタ(Vesta)、あるいはそれを由来に持つ火星と木星の間に小惑星帯に浮かぶアステロイドの名前だ。これには何か意味があるのか。

5−3 再会

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  • ノヴァは狭間の世界に落ちた後にメムラムと遭遇した。
  • メムラムは統治者の一族であり、星の神器を扱える。
  • 白虎はステラから権限を授けられた統治者の一族。

 メムラムは星の神器を操り世界を拓いた。その詠唱を見るに代行を命じた「光」とはすなわちステラやノヴァのような上位者の端末、代行者はそれに従う統治者の末裔のことだろう。

 気になるのは、魔族とベスタの関係だ。エクセリオがある世界に生き統治者の末裔でありながら、なぜ覇権種となっていないのか。詳しくは語れないが、獣人の世界のように幾つかの種族がそれぞれの星で覇を争っていると考えられる。ベスタは名の由来の通りアステロイド(Asteroid)、星のなり損ないなのだ。ノヴァに会い役割を与えられたのは僥倖と言えよう。

6−3 譲れぬもの

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  • ギルドの要求は武力の解体。管理と秩序が行き届いて初めて援助や自由を認められる。共同体全体の利益のために最もリスクが少ない、安く済む選択肢を取らざるを得ない。
  • ベスタの要求は現状の維持。保証無き迎合は縮退と離散を招くため受け入れられない。闘争は自分たちのアイデンティティであり、それを奪われ弱者となることは認められない。

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 双方ともにそれなりに筋が通っていて、もはやそれぞれではどうすることも出来ない〝詰み〟の状況。第三者組織である星見の街が必要とされる場面である。

 それにしてもワーフリくん政治対立や腐敗を書くのが上手いねえ!犬猫の骨肉の争いといいエクセリオの難民描写といい、おれはいつも胃がキリキリ痛くなってるよ!ありがとうな!!!

7−1 交渉、再び

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  • アルク一行は粛清者を全て解放することで「ギルドへの危機意識の喚起」と「ベスタ族全員の救出」を実行しようとする。理由は「放っておけないと思ったから。」
  • アルクの剣は星の神器であり、狭間への扉を開ける。
  • 狭間の空間には、ノヴァ曰く「かつて上位者が放った、不正に世界を渡ろうとするものを排除しようとする抗体」がある。

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 はい指定暴力団星見の街。「実際の恐ろしい存在を目の前にさせられたら流石の上層部も重い腰を上げるに違いない」ってのは根本の思想がシャアのコロニー落としと何も変わらないし、それをやってのけるだけの精神と暴力を備えてるのほーんとに恐ろしいよ。そりゃ監視の目も付けるし、かと言って手も出せないし。どういうオチになるんだこれは。

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 その上で吐く台詞がこれだものなあ。あまりにも純粋で尊くて、危うくて恐ろしい思想。無私の精神で途方もない博打をするの何なんだ。ヴンダーに乗り込んだミサトさんに近いよこれは。本当にヒヤヒヤするし10章何やらかすのか今から楽しみだよ。

8−1 破星剣

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  • メムラムの同胞は粛清者を「羽付き」と呼ぶ。
  • 星の逆槍は異なる領域を繋ぎ混ぜ合わせたり、解きほぐす力を持つ。
  • 破星剣は勇者に授けられる最強の神器である。
  • ステラの権限で『世界を斬る』ことが可能になる。
  • アルクは勇者ではないが、破星剣に守られている。
  • アルク曰く「魔王も同じ剣を持っていた。」

 破星剣とは何かが明かされる回。他作品でも勇者の武器が神造兵器だったりするパターンがあるが、これもそれの類だろう。与えられた権能『世界を斬る』とは物騒な話だ、物理的ではなく概念的に世界のテクスチャを斬り拓き、向こう側に通してしまえる力。勇者に必要機能なのか、それは。

9−1 決意の戦い

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  • 以下、ステラの詠唱

星よ、開け!

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星よ、砕けーーー、メテオ、ブレイク!

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  • 上位個体曰く「自分は星の代行者である。」「裁定が下った秩序を乱す人々に、光は必要ない。」
  • アルク曰く「こんな狭い場所で人を粛清する決まりを作った上位者の秩序を、自分は認めない。」「お前なんかに負ける僕たちじゃない。」

 タイトルの通り、「決意」の回である。中盤の殴り合うような口論に今章の全てが込められていると言えそうだ。フラスコの中でただ殺されるのを観測される立場を捨て、自立していくという宣言だ。まさに天に唾吐く行為であるが、その手には神器が握られてしまっている。どう収めていくつもりなのか。

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 ちなみに上位個体さんの大翼を広げ輝く姿はいかにも天使という姿だが、新約聖書の中において天使の羽についてはケルビム(4枚羽)とセラフィム(6枚羽、ワーフリではセラの本名)にとどまっており、「羽のある天使」像というものは中世ヨーロッパでのイスラムや土着信仰との文化混淆が起きるのを待たねばならない。不思議なものである。ファトマ教の教典にはどう書いてあるのか。

10−1 交わる道

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  • ステラ曰く「私は命令をしないし、命令も聞かない。」「私も剣を持ち、戦う。」
  • ベスタの民はパルぺブラの少数民族コーテッドが招き入れた。
  • シープシッパーの伝承にも星見の街は登場している。
  • ゼッヘル曰く「いつか、選ばざるを得ない時は来る。」「選べなかったことの方が、君の中に残っていく。」

 ついにステラが剣を握ってしまった。あまりに決定的かつ不可逆な変化だ。後ろに隠れて怯えるのではなく前に出ていく、裁断するのだという決意表明だというのはよく分かるが、本当に貴女が剣を振るって良かったのか。彼女が斬った裁定者の正体が何なのかすら、我々にはわからないというのに。

10−2 共犯同盟

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  • ノヴァ曰く「心とは欠落のことだ。」「自分はステラのバックアップだった。」「自我を持ち、孤独を知り、それを恐れた上位者に廃棄された。」「自由になりたいから、ステラたちに手を貸す。」
  • ノヴァ曰く「上位者に会うには星の逆槍を使い、封印された領域を貫く必要がある。」「そのためにはレーヴェに会う必要がある。」
  • レーヴェは揺らぎの中に逃げ込んでおり、探すのには時間がかかる。
  • アルク曰く「自分は狭間の世界を知っていた。」

9章からわかることまとめ

 長く、苦しい情報の羅列と分析が終わった。ここから10章に向けて解釈するべき情報を抜粋していく。

アルクという危険

 一つには、アルクの精神性があげられる。記憶がないままに現れ、傍らの少女を笑顔にしようという願いのもとに多くの人を受け入れ、勇者ライトのために魔王を討ったと思ったら全てを仕組んでいた存在を示唆されて、ついにアルクの「認めない」という感情が爆発する。基本的に自分が好きな人は最大限好きで居ようとして、誰かを泣かせるやつだけは許せないという義理人情の世界を展開していたアルクだが、堪忍袋の尾が切れたという状態だろうか。

 それにしても恐ろしいのはその行動原理である。手元の材料を照らし合わせて下手人を許せないと思ったら、あとはヤッパ持ってシマを割って吊るして終わり、そのまんまヤクザ映画の文法である。ゼッヘルさんがアルクの手段を聞いてドン引きしたのも頷ける。第1部を一貫して受動的な舞台回しとして動いていたアルク。ついに主人公として動くのだと思ったが、彼の手段に無頓着な善性はちょっと危険な気がしている。何もないと良いけど。

 もう一つ危惧していることがある。一貫しているのは「ステラのために」「ライトのために」「誰かのために」という無私の精神だとは思うが、ここからアルクの素性が明らかになるとするならいつか誰のためでもない「アルク自身のための」願いが創出されるはずだ。どこかの初号機パイロットはそれを実行する代償に世界を更新しようとしていたが、アルクは何か抱いてしまうことがあり得るのだろうか。

剣を握ってしまったステラ

 今回の案件で一番恐ろしいのは、ステラが神器を握り、しかもそれを振るってしまった点だと思う。剣を持たずにここまで進行してきた彼女が、儀式的とはいえ世界に向けて一太刀入れたことにはどういうことだろう。海賊の船長として立ったマリーナさん、炎を使ってみせたシャクティリリス、そして今回族長として懸命に戦うメムラムと、手本が多かったのかと振り返るとわかるし、男が闘い女が守られという構図が古いのもわかる。だが、巫女たる彼女が剣を振って本当に大丈夫なのか。

 話の都合上仕方ないんだ、という言説には「隣には同じ権限持ちのシロが用意されてるじゃないか。」という反論を設けておく。つまりステラに剣を握らせたのには作品としての何らかの大きな意味、いわゆる象徴的な出来事として捉えておく必要があると私は思う。戦うための武器なんて振るっちゃいけないよ。戦う決意なんてよほどするもんじゃないし、なおさら自分の責任を痛感している様子から、それでも戦う必要があるんだと再認識して、こう、辛くなる。生きてくれ。

 …ここまで書いてきて、「そういえばステラ、3章で樽をガラスに叩きつけて割ろうとしていたな」という事実を思い出したので、ステラの暴力性に特に意味はないかも知れません…おれには何もわからない……。

ゼッヘルの危惧するところ

 ゼッヘルは9章の中で2回、アルクに忠告している。一つには作戦前夜に星見の街という組織の危険性を、もう一つは全てが終わって帰る時にした選択の恐ろしさについてだ。

 前者についてはそりゃあ街の危険人物や傭兵や冒険者が何人か消えて、よく探したら全員異世界の人と結託してましたとなったら誰だって恐ろしいし、彼らが任意の場所に入口を開けるとしたら兵站の概念もへったくれもない一方的な展開になるに違いないし、どうあっても戦端を開きたくない相手だ。実際にはワールドフリッパーが無いと移動は困難なのだがそれはそれ、ギルドとしては最大級の警戒をせざるを得ない相手のはずである。初の邂逅の際、或いはその後の行動の際、ゼッヘルは注意深く監視していたに違いないし、ライトたちもそれは察していた。うーん鍔迫り合い。

 ちなみにゼッヘルは一度、実際に「異世界の存在が入口を「任意の場所に」開ける瞬間」を目撃している。メムラムが仲間を助けるために狭間の世界を切り拓いた、あの場面だ。ギルドが異界の存在に抱いていた危惧が目の前で繰り広げられているのだと考えると、あの場面でのゼッヘルの動揺っぷりにも頷けるし、その後のギルドの処断もある意味正しいのかも知れない。機動力のある敵への有効打はただ一つ、動く前に叩くのだ。そしてその危惧をそのまま上位者にスライドさせたのだとしたら、アルクの手腕も大したものである。

 後者に関してはかなり示唆的だ。文字に起こすとこうなる。

オジサンの口うるさい小言と思って聞いてもらえればいいんだがね。

次も上手くいく、なんて思ってないよな?

いつか、選ばざるを得ない時は来る。

そして選べなかった事の方が、君の中に、残っていくんだ。

……それでもまあ、頑張んなよ。君がそうしたいならな。

 要は「捨てる時が来るぞ」という本当に小言めいた示唆なのだが、全く意味深だ。何しろ直前にステラが「私はもう何も棄てない」と主張した直後なのだ、作劇としての意味は何なのか。今のところアルクたちは救うべき、一緒に歩きたいと思ったものに全て、本当に全てに手を差し伸べている。星見の街に集って我々のパーティを構築しているキャラクターは皆多かれ少なかれそうなっている。そんなアルクが選ぶ、選ばないものを決める時が来ると言うのか。恐ろしい、おそろしい。

10章PVの考察〜ここから本筋〜 

 さて、ようやく本丸の10章PVである。運営が「考察してみろ」と言うからには、そこには何かがあるに違いない。何もなかったらどうなるのか。分からない、何もわからないまま書いている。楽しくてしょうがない。

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人物

 PVの映像について、まずは人物から当たっていく。全部で8人、括れる要素で括りながら整理していく。

学生服、青ネクタイ

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 男女含めて3人。紺髪ショートの可愛い子に、茶髪プリンピン留めの可愛い子、そして七三根暗三白眼の超可愛い子だ。ネクタイめいたスカーフをワンループに結んでいる。

 共通する意匠はブレザーとワイシャツに付いた銀のレリーフ。単体だとV字だが、合わせると菱形の星印になる。我らがファトマ教が祀る「天の星」、きっと上位者に連なるだろう忌まわしい記号だ。

学生服、赤リボン

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 女性が2人。セーラー服の少女が2人登場している。紅いお団子を二つにまとめた可愛い子に、何とも特徴のなさげな可愛い子である。多少襟首に意匠が認められるが、概ね我々のよく知るセーラー服だ。かわいい。

不思議な幾何学文様

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 3人。青ネクタイの青年に紅セーラーの少女、そして黄色い色が印象的な大柄な男、所属のバラバラな3人が共通して身につけている。Tシャツとパーカーのプリント、そして紙に書いた文様を雑にピン留めにしたりと、非公式な組織体系であることを匂わせている。

 文様の構造は、逆三角形と切れ込みの入った半円とが重なりあったような印象を受ける。前者は3つが織り合わさったのか、後者は何かを守る盾なのか矢を番えた弓なのか、判断が難しいが、きっと意味があるに違いない。

灰スーツ、妙なピン

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 男が1人。短茶髪ウェーブカットをシックに纏めた紳士。この作品出てくる大人の男性は味方敵問わずほぼ全員腹に何か抱えてるヤカラなので、きっと彼も何かやってくれるに違いない。甘いフェイスに惑わされちゃいけない。胸元にピンレリーフ。何かの矢尻にも見えるし、実が成った稲穂のようにも見える。所属、ひいては彼の目的を示したものか。

巫女

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 巫女が1人、多分今回の黒幕。前に垂らした下げ髪にヒスイのような髪留め、胸元の大きなレリーフも同じ材質か。妖しい光を湛えた紅い瞳が何とも印象的な女性。訳知り顔な彼女はアルクたちに何を願い語るのか。

場面

 情報が少ないので、列挙にとどめる。キャラの映らない背景のみの場面が1フレームだけ存在したので、露出などを調整して切り貼りしておく。

黄色い死体袋

大量の病院ベッド、点滴台、黄色い死体袋が並ぶ廊下

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崩れた地下鉄

・地下鉄の構内、崩れ落ちる電光掲示

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仮設住居

・仮設建造物、草木の様子からそれなりに長い期間在る

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交差点

・一般的な交差点。左側通行だが、それ以上はわからない。

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キーワード

 PV内にあったキーワードの中から、文脈や本編の情報から推察できるものを扱っていく。

ESP、PK、超能力

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 紺髪の少女の台詞より。大辞林によるとそれぞれ、

・ESP(extrasensory perception)とは「普通の感覚では感じられない刺激を感じることで、精神感応(テレパシー)・予知・透視などの総称。超感覚的知覚。」

・PK(psychokinesis)とは「科学的に証明されていない超能力の一種。静止した物体を動かすなど、術者が念じるだけで事物に物理的効果を与える現象。念力(ねんりき)。テレキネシス。」

 であり、超能力の一般的な区分を表す言葉だとわかる。それを行使できる人が居る、ということだろうか。普通では感じられない刺激によって予知を行ったり、念じるだけで物理現象、例えば風を起こしたりすることができる人間、そんなものはいる訳がない。では彼女は何を見てそのように主張するのか。

 既存のワーフリの中では、恒常星4アメリアのキャラクターエピソード3「人魚姫と禁断の書」に「ピーけー能力で…」というワードで登場している。下で改めて考察することになる気がするが、紹介しておく。キャラエピはいいぞ、読めば読むほど味が出る。

『能力者』 

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 隈のある青年の台詞より。前述のESPなどと同じ範疇に入れておいて良いだろう。前後の「あんた」や「そんな奴ら」という言葉からは何かしらの対立が、またその庇護するしないが『能力者か否か?』で分かれることが読み取れる。情勢の分析の端緒になりそうだ。

分析と予想

 長い周り道だった気もするが、必要なところは全て回ったはずだ。運営が「考察してみろ」と言うからには、できる範囲でやってみようじゃないか。

外から飛来する世界

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 ワールドフリッパーには基軸となる世界が設定されており、第1部ではそれらを巡ることが目標として設定されていた。ではこの世界はどこにあるのか。思うに、9章の冒頭でステラが説明していた「重力」によって引き寄せられた星≒世界なのだと思う。揺らぎの向こう側の世界に手が届く位置にまで来てしまったことが幸福なのか致命的なのかは定かではないが、アルクたちが前に進むと決めた以上、進むしか無いのだろう。

 重要なのは、上位者がこの接続を避けようとしていた事にあると思う。外世界への抜け道である深淵が広がっていき、世界が繋がり拡散することを彼らは恐れている。それが自分達への猛毒となるからなのか、それともこの世界が終わってしまうからなのかが見えていないが、引っ掻き回して損は無い。ついでに言うと巫女がPV内で言っていた「この世界は閉ざされているが、貴方たちは希望になる。」という言及にも意味を見出せるだろうか。そも巫女嬢が信用ならねえという大前提はあるものの、外の世界にアルクたちは大きな影響を与えられるということだろう。

反目する二つの組織

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 これは確定だろう。上で書いた「青ネクタイ」と「幾何学模様」の2つだ。幾何学模様の頭目が黄色の大男とするなら、消去法で青ネクタイの首魁は紅巫女ということになる。黄色の男曰く「俺達は暴力を使う。」「奴らは欺瞞を使う。」そうなので、比較的黄色男側が叛逆する民衆側、紅巫女側が支配する上位側のようだ。青ネクタイたちのブレザーの胸元の金属を合わせると上位者の文様たる星形十字が浮かび上がるのもその証左と扱えるだろうか。10章ではこの対立を軸に話が進むと言えそうだ。

 ここで思い出すべきはゼッヘルの指摘、「次もうまくいくと思うな」という忠告だ。アルクの立場だから出来る第3の選択を取り続けてここまで来たが、それが行き詰まることが示唆されたならば、きっとどちらかを選んでしまうのだろう。これの難しいのは、アルクが意図的に切り捨てるかがわからないということだ。要は「全部終わった後に、取り返しがつかない選択をしたことを察する」パターンがあることである。不如意による永遠の別れ、二つの勢力のうち片方を結果的に処断してしまう構図はあるのではないか。アルクくんをもう曇らせないであげて。

スーツの男は何者か

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 これがどうにも浮いた人物である。子どもー大人という対比構造を採用するなら「青ネクタイ」に、正直上の集団に属さない第三者の一般市民と言われても納得は行く。一方で胸元に光るピンナップがどうも眼を引く。上にも書いたが弓矢の鏃のような、麦の稲穂のような、奇妙な造型だ。ここまでのワーフリ作品の中で農耕に焦点を当てたキャラは皆無に等しいので前者のような気もするが、弓が大地に刺さって四つに割れている、のだろうか。何とも考えにくい。前編を見て考えよう。

「違和感」と本考察

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 さて、上の諸々を書いているうちに段々と違和感が湧いてきた。それが何かを言語化する内にかなりおおきなものになって行ったので、これを本考察として以下に書く。中身はタイトルの通り、「題名」と「台詞」だ。

題名から考える違和感

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 今回の章は「終局の始原」と題されているが、タイトルに選ぶ言葉には大いに意味があると個人的に考えている。そこに選定された単語への認識を「多分こんな意味だろう」から「こういう意味である」と確定させることは、後々の思考活動に大いに寄与すると考えている。まあ普通に考えれば「終わりの始まり」かなくらいの想像はつくが、それ以外に言える情報はあるのか、という話だ。順に見ていく。

「終局」

終局とは - コトバンク

[1] 〘名〙

① 碁、将棋などを打ち終わること。また、その終わりの局面。

② 事がおわること。事件の落着。終結。おわり。しまい。

精選版 日本国語大辞典

 ①にもある通り、何かを実行していった終わりの局面、盤面、情勢辺りを指す語である。この単語に於いて記憶に新しいのは「劇場版Fate Grand Order 終局特異点ソロモン」であろうか。あれも互いの駒を使い尽くした全ての決着として「終局」という言葉が用いられている。終局とは終焉でもなければ結局でもない、そこに至る事件や局面の展開を前提として初めて「終局」となるのである。

「始原」

始原とは - コトバンク

物事の始め。起こり。

デジタル大辞泉

 「始原」については、古代ギリシア哲学において根幹を成す概念の一つ「アルケー(ἀρχή)」の訳語として「万物の始原」が当てられているのが有名だろう。ヘラクレイトスは火に、ピュタゴラスは数に、全ての始原を見出したのだ。

 とはいえ一般的な語ではないためか、ほとんどの辞書には載らない単語のようであり、このままでは「起点」や「原因」などで置き換えても通ってしまうことになる。語義をもう少し明らかにするため、ここはもう一捻りしたい。「回転ー転回」や「解読ー読解」のように、いくつかの熟語は前後を入れ替えても同義な場合があり、今回もその多分に漏れない。今回の場合は、「原始」だ。

原始とは - コトバンク

1 物事のはじめ。おこり。元始。

2 初期の段階であること。組織・構造などが単純で、未分化・未発達なこと。

3 自然のままで、人為の加えられていないこと。

デジタル大辞泉

 だいぶわかりが良くなった。すなわち始原=原始とは何かの始まりであるのに加えて、未分化な状態、人の手が加わっていない状態を指す、と言える。近代言語論の祖ソシュールが示したように、人が物体Aを認識するとはすなわち差異化=Bではないと言うことであり、他との違いを明らかにすることで始めて「始原」という語が正確に把握されたことになる。始原とは起点でも原因でもない、そう宣言することが大事なのだ。

対照的な二語の矛盾

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 職業病が出た。話を戻すと「終局の始原」とはすなわち「進行した何かの終わりの場面」の「未分化で無垢な始まり」ということになり、何とも対照的な二語が並んでいることがよくわかる。とはいえそのまま繋げては妙な訳文になるので、次はこれを一つの意味に構成し直していきたい。タイトル自体を再解釈することで10章が持つテーマ性の中心部分を先に見てしまおうというわけだ。

 さて、そうして考えて行くと、妙な疑問に行き当たる。「何らかの終わりに至る局面が想定されながらも、未分化な状態=誰も手をつけていない状態」は想定されるのか、という疑問だ。「始原、原始」であるからにはそれはプリミティブな存在であるはずで、こうなっていくはずだという「局面」の想定からは解放されていなければならない。逆に終局を見通し切った状態ならば発生している点はあくまで確定した結末を前提とした「始点」であり、無垢さを湛えた「始原」とはなり得ない。「既に想定された局面とその終局」と「何も操作されていない無垢な始点」とが両立することは可能なのだろうか。

終局と始原を同時に観測する視点

 いろいろ捻って考えた結果、一つの可能性に思い至った。すなわち観測者が「終局」をそれと知らずに認識したまま「始原」を観測する、というプロセスを辿れば両立が可能であると考える。思考が難しいが、例えば「正夢」の現象がこれと良く似ている。ある景色が夢に出たとして、その場面に立ち当った瞬間に「ああ、この場面は見たことがある」と初めて意識する、という一連の流れだ。先にある過程を無意識に知った状態=擬似的にプリミティブな状態でその過程を辿り、ある瞬間で初めて、自分はこの結末までの道のりを知っていて狂いなく歩いたのだと気づく、というものである。

 しかしここまでだと大分想定しづらいというか、実際にそんなことがあるとは思えない。そこで、どこかに援用出来る論理は無いかと探すのである。ここで重要になるのが、始原と終局の2点だ。この理論だと10章が始原という事になるが、終局に当てはまる内容が想定しうるだろうか。10章の先にある内容が既に示されている、ということがあり得るのだろうか。

既に存在する終局

 先に「既に語られた考察は借り物になるから書かない」と言ったが、逆説的にその説への援用になると思うため容赦して欲しい。すなわち「10章の先に3章「大海の世界」があるのではないか?」という考察である。既に「大海の底に走る高速道路」「マリーナの故郷が新宿であること」「トレーネのエピソードで語られた〝信託庁〟の存在」などから濃厚に「現代日本あるいはそれによく似た世界と3章世界は親和性が高い」という情報が見て取れる。

 この論理に乗せるなら、アルクたちは10章での旅の最後に何かの無垢な始まりを目にして、同時にその終局を既に観測している状態になるのである。3章世界との接続を想定して初めて「終局の始原」は成立するのである。

隈のある男の言葉に見る違和感

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 もう一つ書く。PVで四人目に登場したこの男、多分私の現状での最推しである彼のセリフ、どうにも違和感がある。上では「アルクたちを危惧する台詞」と解釈して流した。最初に読んだときは当然そのように思えたが、よくよく読むとそれだとどうも繋がりが悪いように思えるのだ。順に説明していく。

あんたも『能力者』でしょう?

なんでそんな奴ら守ってるんですか。

 とあるが、この台詞での登場人物は「隈の彼」「聞き手」「『能力者』」「そんな奴ら」の4種類である。構造としては「『能力者』」である「聞き手」が「そんな奴ら」を守り、それを「隈の彼」が咎める、となっている。これのどこに違和感があるのか。

 端緒となったのは、『能力者』という言及だ。通常能力者と言われると「PKなど超能力を行使する存在」と思うが、これをアルクたちを指す言葉とすると奇妙なことが起こる。アルク一行には、超能力やそれに準じる魔法を行使するような人物は居ないのだ。強いて言うならライトが反重力めいた挙動をしているが、それならもっと適した言葉があるはずだ。モフモフとか、空飛ぶ毛玉とか。シロもかなり異常な存在だが、それでもミュータントや化け物など、別の言葉があるはずだ。

偽装された『能力者』

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 何が言いたいか。隈の彼は素性もわからないアルク一行の姿を見て「『能力者』だ」と断定して見せた。則ち彼の頭には「アルクのような服装の存在=能力者」という、実際の超能力云々とは別種のカテゴライズがされているのではないか。PVの中で能力者と言われて反射的に「超能力の事か」と思考したのは何故か。直前でそのように語られたからだ。つまりPVで渋谷の少女が超能力について語ったのは偽装、ミスリーディングのために設けられたと言わざるを得ない。二重括弧でくくられた『能力者』には、全く別の線引きがあると私は考えている。

 では一体何を指しているのか。姿だけを見て反射的に言及出来るのは何故なのか。更に彼の言葉を注視してみると、「あんたも」と言っている。すなわち、彼は単数形でアルク一行に言及している。一行全員に対して言及するならば「あんたたちも『能力者』でしょう?」という台詞になるはずだ。これはおかしい。アルク一行の誰の姿を見て、彼は「『能力者』だ!」と直観して見せたのか。アルクたちの中で見間違えられるような人物は居るのか。

彼女はそこにいる

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 すなわち、「ステラ」と「レーヴェ」である。思うに、抵抗組織側にはステラと同じような姿形でかつ異質な能力を行使するレーヴェが深く助力している。彼はそんな『能力者』と呼ばれる彼女を見て自分たちを助ける存在と考えていて、だからこそ「そんな奴ら」=体制側の人間を助けるステラに強烈な違和感を感じている。なぜそのような振る舞いをしているかはまったく想像がつかないが、魔王の意志を遂げるために揺らぎの向こうに潜伏したと明言された彼女がその向こうから近づいてきた10章世界に到達していても何もおかしくはない。きっとレーヴェはそこにいる、隈のある彼の言葉の裏側はこのように解釈出来る。

 実はもう一つ、少し筋違いの論理も立つ。ステラとレーヴェに関しては「姿形」という点での共通項から論理を立てたが、もう一人、「行為」によってレーヴェと結びつくか、少なくとも超常の力を行使出来る人物がいる。レーヴェはステラと同等の力を行使するため、世界を繋いで渡り歩いている。この行為を行える人物がいる。すなわち、アルクである。彼が世界を切り拓いて誰かを助けるという場面を想定して、隈の彼が偶然それを目撃した、という筋書きを考えれば成立する話だ。丁度剣から炎も出るし、きっと能力者に見えたに違いない。

 もちろん大前提は聞き手=アルク一行なのでそこが崩れると厳しいが、そんなことはないと思いたい。また当然「体制側に超能力を行使出来る人が居ないはずだから、それに当惑しているだけだ。」という論理も成立するが、そうなると単数形で言及した理由が薄くなる。一行の誰に言及したのか、それが問題だ。何にせよ、反体制グループから敵視の視線が注がれている。ここからどう挽回するのか、楽しみで仕方がない。

いったんここまで

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 ここで一旦区切る。他にも「セーラー服の少女の正体は?」「渋谷であることに意味はあるか?」「あの黄色い死体袋は何?」とか考えられることは多いが、Twitterで既に言及されている部面もあるため、取り敢えず省略したい。前編が公開されたら再解釈を試み、良く読んでいきたい。一つ言えることは、運営が「考察をしろ」と言った以上、そこには何か意味があると言うこと。論理を詰めていっても良いし、直感を言葉にしても良い。最高のストーリーを楽しんでいこう。下の方に別の考察記事もあるので、出来たらそっちも読んでほしい。

 なお、前編が公開されたら頑張ってそこの情報を整理していきたい。明らかに考えるだけで楽しい。ウッハウハだ。